過去10年、主要なマラソン大会のメディカルディレクターは、水分の過剰摂取の危険性について警告を出すようになりました。1981年、ウルトラマラソンレースの「南アフリカ・コムラッズマラソン」の最中に低ナトリウム血症で死者が確認されて以来、かなりの犠牲者が出ているためです。このような症状はまれであったため、救護チームは脱水症状と勘違いし、衰弱したランナーの体にさらに水分を注ぎ入れて症状を悪化させてしまうという事態がしばしば発生しました。現在ではマラソン開催者らが注意を払っているため、同じ過ちは少なくなっています。
低ナトリウム血症は、はっきりとした初期症状が出ないこともあり、一般に考えられているよりも発生頻度が高いものです。ロンドン大学の研究者は、2006年のロンドンマラソンの参加者88人を被験者とし、競技の開始前と終了後の血液サンプルを採取してナトリウムの値を測りました。驚いたことに、11人(21.5パーセント)が異常に低いナトリウム値を示し、無症候性低ナトリウム血症を発症していました。その年のレースは冷え込んで雨も降っており、選手たちがよけいな水分補給を思いとどまった点を考慮すると、非常に高い数字です。予想どおり、低ナトリウム血症の症状が出たランナーたちの水分摂取頻度(約1.6キロごと)は、健康状態に異常のない、グループ(約3.2キロごと)よりもかなり高いことがわかりました。
この調査においては、具合が悪くなって苦しむランナーはいませんでしたが、ナトリウム値の低い被験者が多いという結果は、多くのランナーが沿道でできるかぎり水分をとろうとしていることを示唆しています。水分をとる時間そのものが長くなるので、ゴールまでに4時間以上かかる人たちのリスクが高くなるように思われます。スポーツドリンクにはナトリウムが含まれていますが、それによって低ナトリウム血症が起こりにくくなるかはわかっていません。最善の対策は水分をとりすぎないことです。専門家によれば、摂取量は20分間ごとに240ミリリットル程度が最適だそうです。水分補給は「のどの渇きを感じたとき」だけに留めるべきだという専門家もいます。
ちなみに、スポーツ時ではない、デスクワークや家事など一般的な生活を送っているときは、尿や便、皮膚からの蒸発、呼気などで1日に1.5~2.5リットルの水分が失われるので、同量の水を飲むことでバランスがとれる。一般的な食事をとっている人なら、食事に約1リットルの水が含まれている上、体内の代謝で生まれた水もあるので、飲み水としては1~2リットルをこまめにとることが大切です。ティカップ1杯程度(約150cc)を1~2時間ごとにとってみてください。、特に高齢者はノドの渇きを感じにくいため、自分でも気づかないうちに脱水症状を起こすことがあります。脱水症状のサインとして重要なのは「脇の下の状態」です。脇の下は普段からわずかに湿っているものですが、寒くもないのにカラカラに乾くのは、脱水症状のサインです。
【ポイント】
水分をとりすぎると塩分の値が下がって(低ナトリウム血症)危険な状態となり、死に至る恐れがある。20分間ごとに240ミリリットル程度の水分をとるようにすること。
(※)脳浮腫:
急性の低ナトリウム血症では脳細胞は血漿浸透圧の等張性がうまく調節できず、
浮腫が起きる。その結果、中枢神経系の機能障害が起こりやすい。 死亡率も高い。
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参照:WHICH COMES FIRST. CARDIO OR WEIGHTS?
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