マックマスター大学で子供の運動と栄養に関する研究をおこなっている、ブライアン・ティモンズは「適度な運動は効果的ですが、過度になると逆効果を生む場合があります。これは専門用語で。「Jカーブ効果(ある期間を超えると、初期とは逆の効果が生じること)と呼ばれるものです」と述べています。この現象をわかりやすく説明してくれるのが、イリノイ大学による2005年の研究です。マウスをインフルエンザ・ウイルスに感染させ、運動をさせないグループ、一日20~30分間の運動をさせるグループ、一日2.5時間の運動をさせる三つのグループに分けてその後の症状を調べたところ、適度な運動をさせたグループの生存率は82パーセントで、まったく運動をさせなかったマウスのグループの生存率43パーセントに比べ2倍という結果が示されました。これは、運動が免疫機能を向上させた証拠だといえます。一方、長時間の運動をさせたグループの生存率は30パーセントと3グループのなかで最低でした。これは、炎症の促進と抑制という免疫細胞の二つの働きのバランスに、さまざまな影響が及ぶことが原因であると考えられています。適度な運動は過度の炎症を抑えるためにこのバランスをうまく保てるものの、長時間の激しい運動は炎症を過度に抑制するために、免疫細胞の働きを阻害してしまうのです。
ランナーを対象にした研究では、週に約100キロ以上走るランナーは、風邪にかかりやすくなることがわかっています(ロサンゼルスマラソンに向けてトレーニングをしている200~300人が対象)。「午前中は水泳、夜はランニングというように長時間の激しい運動を連日続けた場合や、フルマラソンを走り終えた直後などに、免疫機能の低下が見られはじめます」とティモンズは述べています。
運動によって免疫機能はきわめて短時間で向上しはじめます。2009年、アイオワ州立大学は、運動がもたらすインフルエンザの抑制効果を調査するマウス実験をおこないました。適度の運動を14週間に渡っておこなわせたグループ、45分間のトレッドミルを一度のみおこなわせたグループ(運動の15分後にインフルエンザ・ウイルスを投入)、運動をまったくさせていないグループをすべてインフルエンザ・ウイルスに感染させ、その結果を比較したのです。
予想どおり、日常的に運動をしていたグループは、その後10日にわたってインフルエンザの症状やウイルスの量でもっとも低い値を示しました。意外にも、一度のみの運動をしたグループにも(その効果は数日で低減されたものの)、まったく運動をしないグループに比べてきわめて大きな免疫力の向上が見られました。
この結果からは、風邪を予防するためのヒントが得られます。人の密集度が高く、伝染病に感染しやすいような場所(飛行機の機内など)に行く予定があるときは、前日(当日の朝でもよい)に運動をしておけば、感染率をかなり低減できるのです。
人間に対する研究でもマウスと同様の結果が示されています。サウスカロライナ大学では、547人の成人を対象に一年かけて調査をおこない、適度な運動習慣のある人は、そうでない人に比べ上気道呼吸管感染症にかかる率が20パーセント程度低いことを明らかにしました。他の疫学研究でも類似の観察結果が得られています。風邪を引きやすい冬の時期に健康な状態でいたければ、ビタミン剤ばかりに頼らず、ジムに通うほうが得策だといえるでしょう。
【まとめ】
運動によって免疫機能が向上するという研究結果が多く報告されているが、過剰な運動によって逆に免疫機能が低下することもある。一度のみの運動でも、その後の免疫系を向上させることができる。
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参照:WHICH COMES FIRST. CARDIO OR WEIGHTS?
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